「生命の星の条件を探る」

子どもの頃から「地球以外に人間が住む星はあるのだろうか、いやあってほしい」という思いを持っていた。いままで地球外生命体に関係する本や話に接してきたものの、いつも隔靴搔痒の感が残ってしまう。

「生命の星の条件を探る」
「生命の星の条件を探る」

しかし数年前に子どもの頃からの思いに対してきちんと整理して理解の道筋を示してくれた本に出会った。阿部豊・著「生命の星の条件を探る」である。著者自身、子どもの頃から抱いていた地球外生命が住む星があるだろうかという疑問を持ち、その疑問を解明したいという情熱が研究者になり、難病ALSになってもその情熱が冷めることなく研究を続けている。妻の阿部彩子も猿橋賞を受賞した優秀な気候システム研究者であるが、お二人の夫婦という関係を越えた深い信頼関係に基づく研究者同士の業績である共著論文「陸惑星の生存限界」が果実となって結ぶ。

「生命の星の条件を探る」の中で特に興味深かったのは私たちが住む海が多く占める地球のような「海惑星」より、湖が点在するような「陸惑星」のほうが生命体が発見される可能性が高いということだった。

「せいめいのれきし」
「せいめいのれきし」

そして「生命の星の条件を探る」で紹介された絵本「せいめいのれきし」を読んだ。この絵本は、地球上に生命が誕生してからいままでを平明な言葉と絵で描かれていて、子どもはもちろん大人でも興味深く読むことができる好著であった。この絵本の最後に、、、、さあ、このあとは、あなたのおはなしです。主人公は、あなたです。、、、とある。さて私たちが住む地球のような星があるだろうか、いつ見つかるだろうか、子どもの頃から持っていた思いがますます膨らむ。

国立天文台のホームページの冒頭にプロモーションビデオがある。このビデオではハワイのマウナケア山で日本を含む世界5カ国によって計画されている超大型望遠鏡天文台建設のことが紹介されている。超大型望遠鏡は国立天文台が誇るすばる望遠鏡をはるかに凌ぐ望遠鏡で、地球外生命体の可能性のある星の発見に繋がる大きな期待が膨らむ計画である。

さて、ハワイ島先住民の人々がマウナケア山で計画されているこの超大型望遠鏡天文台建設に反対しているというニュースが今朝あった。先住民の人々にとってマウナケア山は聖地であり、もう既にマウナケア山にはすばる望遠鏡を含め13基の天文台があるが、これが最後だと幾度も聞かされてきた、これ以上は認めることはできないというのがその主張である。もし私が先住民のひとりなら美しい自然に囲まれたマウナケア山に13基もの天文台がある風景に心が傷むかもしれない。しかし、地球外生命体の可能性のある星の発見に繋がる期待を膨らませているアンビバレントな私がここにいる。

おそらくこのような科学と宗教の問題は様々な形で私たちに問いかけてくることが多くなるように思う。そのような問いかけにどう考えるか、絵本「せいめいのれきし」の最後にある、、、さあ、このあとは、あなたのおはなしです。主人公は、あなたです。、、、という問いかけと重なる。

好著と出会うということは、畢竟自分はどう考えるかということと同義だとあらためて思うのである。

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