「男と女」

久しぶりにフランス映画「男と女」を観た。この映画を最初に観たのは多分、20歳にもなっていない頃だったと思う。今、思い起こせばストーリィは殆ど覚えていなくて私自身、まだ大人になっていない頃だから男女の心の機微など理解できる筈もなく、ただ美しい映画だったということを覚えている。

男はジャン・ルイ(役:ジャン・ルイ・トランティニアン)、カーレーサーで幼い一人息子を寄宿舎に預けている。妻はルイがカーレースの事故で重傷を負ったショックで自死している。女はアンヌ(役:アヌーク・エーメ)、映画業界でスクリプトの仕事をしていて小さな娘を同じ寄宿舎に預けている。映画のスタントマンをしていた夫は撮影中の事故で亡くなっている。

男と女はそれぞれ日曜日に子どもに会うために寄宿舎に行き、二人は出会い、やがてお互いに惹かれ合うようになり、ついに二人だけの時を過ごす。ところがアンヌの脳裏から亡くなった夫の存在が消えていなかった。そしてアンヌは別れを告げて電車に乗って去る。別れの理由に釈然としないままアンヌを見送るルイ、でもやはり別れられない。車でアンヌを追うルイ、駅を降りたアンヌの眼にルイの姿が映る。やはりアンヌもルイと別れられないと悟り、気持ちがこみ上げてルイの胸に飛び込むその映像でストーリィが終わる。

美しいパリの街並み、生死の中で繰りひろげられるカーレース、愛くるしい子どもたちの仕草、効果的に挿入される老人と犬のシーン、夜の車窓に映るアンヌの美しい憂いを帯びた横顔、そして映像に溶けるように流れるフランシス・レイによる音楽。

半世紀前に公開されたクロード・ルルーシュ監督の「男と女」は、今観てもとても洗練された美しい映画だった。

ただ、男女の心の機微をこの歳になって果たして理解できているかと自問してみたところで、50年経った今も自答できていないと告白せざるを得ない。

2件のコメント

  1. ブログ拝見しました。
    懐かしの[男と女]心に沁み入りますね。
    懐かしの私の淡い想いが思い起こされました。

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