・・・折しもバスは、峠を越えたところで、正面に海を眺めることができた。晴れた一日とはいえ、冬の海だ。白波をたてているのが、遠くからも見渡せる。夏には、浜は敷き詰められた昆布でいっぱいになる村だったが、冬は荒涼としている。・・・
谷村志穂の「海猫」の一節である。この小説を読んでいつか南茅部に行ってみたいと思っていた。そして今日、南茅部へ行った。小説の一節にあるように川汲峠をバスで越えると正面に南茅部の海が広がっていた。
じつは南茅部に行ったのは、以前に投稿したお茶を楽しむ会を主催した田中あつみさんからご自身がお住まいの南茅部でお茶を楽しむ会をするのでとお招きの連絡をいただいたからである。
昆布漁解禁前の南茅部は静かで時間がゆったりしていて、そのゆったりとした時間の中、篠笛の音色を聴きながらいただく自然茶が身体に滲みていくようだった。まるで川が山林から南茅部の海へ注ぐミネラル水のように。