まど・みちお

詩人のまど・みちお(1909.11.16~2014.2.28)の身罷りから今日で丁度5年が経った。

山口県の徳山で生まれ、父親の事情で家族が台湾へ移住するが、当時5歳のまど・みちおだけが徳山に残り、4年くらいの間、祖父と暮らしたのち家族が住む台湾へ移る。台湾で結婚をし家庭を築き、太平洋戦争時に在台湾の日本部隊に入営する。シンガポールで終戦を迎え日本に帰国し、出版社に勤務する。ここで児童向けの雑誌や本の編集に携わる。退社後からは詩、童謡、絵の創作に生涯を捧げる。国際アンデルセン賞をはじめとした様々な業績は後の詩人や児童文学作家などに大きな目標となったに違いない。しかし本人はそういうことに頓着せずに、穏やかで謙虚な人柄で世界中の子どもたちや地球上のあらゆる生命体への優しい眼差しをもったまま一生を終えた。

私の孫が幼い年ごろ、「♪じょうしゃん〜じょうしゃん〜おふぁなななないのね〜しょうよ、かあしゃんもなないのよ〜♪」と舌足らずの声で童謡を唄っていたのを思い出す。ぞうさん、やぎさんゆうびん、おにぎりころりん、一年生になったら、ドロップスのうた、などの童謡は私のような高齢者であってもたまに口ずさむことがあるほどである。

ところで今日は「ビスケットの日」らしい。このビスケットをモティーフにした童謡「ふしぎなポケット」もまど・みちおの作詞である。「♪ポケットのなかにはビスケットがひとつ〜ポケットをたたくとビスケットはふたつ〜・・・♪」とポケットをたたくとビスケットが増えるという詩で、考えてみるとほんとうに不思議な詩である。ポケットの中にある一枚のビスケットはたたくと割れるだけで増えるはずもない。

ある仏教の僧侶がこの童謡「ふしぎなポケット」について書いていたのをどこかでみたことがある。5歳のころ数年の間、家族と別れて祖父と暮らしていたまど・みちおは、祖父のポケットの中になにかいい物が入っていて打ち出の小槌のようにたたくとそのいい物がどんどん増えてくるという夢想に浸った思い出があるのではないかというのである。たしかにそう考えるとポケットをたたくとビスケットが増えると子どもたちが夢想するなんてなんともいえず心が豊かになる。

ハーブティーとビスケット
ハーブティーとビスケット

さて、ビスケットの日の今日、友人から送っていただいた品の中にあった三国湊・三國屋善五郎のハーブティー(カモミールジャーマン・カルダモン・ジンジャー・ユウカリプタスのブレンド)と函館のバタービスケットを愉しんだ。小皿のビスケットが増えるように小皿たたいて夢想してみたが増えるはずもない。でもビスケットが増えない代わりに、暖かく香り立つハーブティーのお陰で童謡「ふしぎなポケット」を聴いた子どものように心が豊かになった。

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