「小さな旅」

コロナ禍が長引くと偶には旅番組を観たいと思いテレビの電源ボタンを押すことが多くなる。

旅番組といっても国内ものや国外もの、一人旅や複数人連れ立っての旅、バス旅や鉄道旅や船旅、等々色んな企画で放送されていて千差万別である。そして旅番組の楽しみ方はそれぞれ視聴者によって様々だと思う。

私の場合、旅番組を観るとき、およそ二つの楽しみ方で観ている。一つめは恰も自分がその場所に行ってその場所の新たな旅の発見をする楽しみ、そして二つめはその場所に生活している人々の暮らしぶりからその人々の心情に触れる楽しみである。

大方の旅番組は私の前者の楽しみに応えてくれるのでそれなりに面白いと思うが、私の後者の楽しみに応えてくれる旅番組は意外に少ない。その少ない旅番組の中でもテーマ曲も相まってNHKの「新日本風土記」と「小さな旅」を私は好んでよく観る。

特に「小さな旅」はそこに暮らす人々の仕事、家族、風土、文化などを30分程の時間の中にきめ細やかに丁寧に描いていて、その人々がまるで主役になって語りかける小説のように感じる。まさに「小さな旅」をとおして「小さな小説」を味わえる数少ない貴重な旅番組で、私は少し酩酊しながら観るのを楽しみにしている次第である。

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