函館市北方民族資料館

函館市北方民族資料館
函館市北方民族資料館

一昨日、散歩がてら末広町にある函館市北方民族資料館に入ってみた。旧日本銀行函館支店(1926年築)を改装しアイヌ民族の資料を展示してる。館内には民族の生活の様子、衣服や装身具、祭りや祈りの世界、土器や楽器や狩りの道具、こども達の遊び、アイヌ絵が展示されていて、これらアイヌ民族の資料は函館博物館旧蔵資料、北方民族の研究者である馬場脩氏と児玉作左衛門氏の蒐集資料が中心だという。

8〜13世紀(鎌倉時代後期)ころに蝦夷地を中心に栄えた擦文文化の後、アイヌ民族の歴史が始まる。和人が蝦夷地に住み着いてからコシャマインの戦い、シャクシャインの戦い、クナシリ・メナシの戦いなど和人との諍いを経て和睦を結ぶも片務的交易や労役、そして制圧と支配に組み込まれていく。1899年公布の「北海道旧土人保護法」、1934年公布の「旭川旧土人保護地処分法」など事実上アイヌ民族の文化からアイヌの人々を切り離すべく同化政策を強制され、生活の基盤を剥奪される歴史を辿る。

時代も変わり、第二次世界大戦後はアイヌの人々がアイヌ民族としての誇りをもって社会的地位の向上をめざし1946年に「北海道アイヌ協会(後に北海道ウタリ協会に改名)」を設立し、「アイヌ民族に関する法律」の制定を国に要望、1994年にはアイヌ初の参議院議員・萱野茂氏が誕生している。このようなアイヌの人々の努力の甲斐もあり、ようやく1997年に「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」が公布され、「北海道旧土人保護法」、「旭川旧土人保護地処分法」が廃止される。世界には先住民族が圧政と支配を受けて不当な立場におかれる境遇として共通した歴史がある。国連では2007年に「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されたのを期に2008年に「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が国会で全会一致で採決される。

しかし、現在においてはアイヌ民族として生活している人はもういない。北海道大学がアイヌの人にアイヌ民族であることを意識するかどうかのアンケートをした結果、全く意識しないが全世代では48%、30歳未満では66.8%であったという。そんな中、ある一人の若者がアイヌ民族の長老であった祖父の遺品や父がアイヌのお祭りのイベントを仕切る姿をみて、このままではアイヌ民族の歴史、文化、宗教観、自然観、生活の智慧などが失われていくかもしれないと一念発起し、アイヌ民族について学び継承していこうとする姿と彼をサポートする父親の姿をドキュメンタリー放送で観たことがある。

アイヌ神謡集とアイヌの昔話
アイヌ神謡集とアイヌの昔話

函館市北方民族資料館でこの2冊の本を求めた。

この2冊は知里幸恵(1903.6.8~1922.9.18)がユーカラというアイヌ口承の神謡を和文に編約した「アイヌ神謡集」と、参議院議員であった萱野茂(1926.6.15~2006.5.6)が幼少のころ祖母からアイヌに伝わる昔話を和文にして纏めた「アイヌの昔話」であるが、アイヌ民族の宗教観、自然観などが平易な文章で書かれている。この2冊をとおしてアイヌの人々の心に少しでも触れることができたらと思う。

2件のコメント

  1. 今日のブログで北方民族資料館の事が書かれていたので私の思いの一言も書きたい。
    それは以前、中国の留学生と「多民族国家とガバメント」の難しさを話していたとき、日本も多民族国家ではないかと反論を食らった時である。確かに1997年まで法律で旧土人法という法律が有った。又、島崎藤村の「破戒」にあるような事も最近まであったではないか。私たち日本人は都合の悪いことは忘れてしまう、又そのような教育をしないで去ろうとする。時々、重い話であるが想い巡らさなければと思う。

    1. あらゆる世代がまず歴史を知ることから始めることも大切かもしれません。

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