愛しゃ

映画「海辺の生と死」
映画「海辺の生と死」

今日、五稜郭公園近くの小さな映画館で映画「海辺の生と死」を観た。今年5月27日に投稿した「死の棘」でも紹介した島尾ミホ・著「海辺の生と死」と島尾敏雄・著「島の果て」が原作である。

島尾敏雄・ミホ夫妻が太平洋戦争の最後の時期に奄美群島・加計呂間島で出会い恋に落ちるストーリーである。映画の役名は島尾敏雄・著「島の果て」に書かれていた朔中尉と大平トエとなっている。

海軍特攻艇隊の隊長、朔中尉が加計呂間島に駐屯することになり国民学校教員の大平トエを通じてトエの父親から兵隊の教育用に本を借りることから二人が知り合って好意を抱き合うようになり、人目を忍んで逢瀬を重ねる。しかし戦況は厳しくなり沖縄陥落、広島原爆投下のもと、ついに朔中尉の出撃のときがくる。その夜、トエは朔に会いたい一心で裸身を清め母の形見の喪服を纏い加計呂間島の海辺に向かう。死を覚悟している朔、死なないで戦争はいやと泣き叫ぶトエ、二人は海辺で狂うように抱き合う。そしてトエは「愛しゃ、愛しゃ、愛しゃ・・・」と声を絞り出す。

朔は出撃に向かい、朔の死と自らの死を同化させたいトエは短刀を喉元に抱きしめながら出撃の姿を確認するため明け方まで海辺で待つ・・・。

夜が明けると出撃前に終戦となり朔は命をとりとめ、トエは家に戻ると近所で出産があり新しい命と出会う。

映画は死の前でぎりぎりの愛を求め合う二人、そして新しい命との出会いが加計呂間島という生きとし生けるものの命が共存しあう自然豊かな空間に展開していく。・・・海辺の生と死である。

キャストの満島ひかりが全身で絞り出す「愛しゃ、愛しゃ、愛しゃ・・・」が映画館を出ても耳に残った。

 


※ 古語で「愛しゃ」は「かなしゃ」という音で「いとしい」という意味。沖縄諸島、奄美群島で使われている言葉

 

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