ビリー・ホリディ

今日はクリスマス・イヴといってもいつものことながらこの部屋には私の他に誰もいない。だから誰に遠慮することもなく、ジャズヴォーカルのCDを聴きながら今日手に入った八雲イタリアン・ピアットのローストチキンレッグとチキンピッツァを安手のレッドワインで口に流し込むことにした。

BILLIE HOLIDAY
BILLIE HOLIDAY

今夜はビリー・ホリディ(1915.4.7~1959.7.17)を聴きたい。彼女の甘くかすれたヴォーカルがいい。このCDはメジャーレーベルではなく、どこかの安売りで15年位前に手に入れた代物だったが、ビリー・ホリディの声を初めて聴いてすっかり虜になった。

すべての曲が素晴らしい。特に「STRANGE FRUIT(奇妙な果実)」を聴くとたまらなくなる。

この曲の詞は、アメリカ南部の人種差別でリンチにあって木に吊された黒人の姿がまるで奇妙な果実がポプラの木に垂れているようだ、という悲惨な嘆きの内容である。しかしビリー・ホリディは告発するような強い歌い方ではなく、ただ淡々とあの切ない声で歌う。この曲を聴くとアメリカの人種差別のことを云々するというのではなく、人間が生きていくことの無情さや不条理をじわっと感じてしまう。ビリー・ホリディの生い立ちをここに書くのは止めておくが、不遇な一生を生きた彼女だから尚更そう感じてしまうのかもしれない。

1972年に制作されたビリー・ホリディの一生を描いた映画「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実(原題・Lady Sings the Blues)」でダイアナ・ロスがビリー・ホリディを好演している。その中でダイアナ・ロスが奇妙な果実を歌っていてこれも素晴らしい。

クリスマス・イヴでビリー・ホリディを聴くというのも妙なのかもしれないが、誰に気兼ねもいらない夜だしひとり愉しむことにする。

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