伊勢物語

伊勢物語
伊勢物語

宇治拾遺物語の次に伊勢物語を読んだ。伊勢物語は平安時代初期に成立した編者未詳の短編連作歌物語である。原文は全125章段の短編で構成されているが私が読んだのはその内の有名な62の章段が取り上げられている入門書的な本である。

元服したばかりの主人公が奈良のはずれ春日の里で出会った美しい姉妹に恋心を抱くという第一段から始まり、恋の遍歴、親子愛、友情、東下りの旅、そして最後は臨終の和歌で終章する男の一代記である。伊勢物語は「在五(ざいご)が物語」「在五中将の日記」とも呼ばれるが、在五というのは在原業平のことであり、殆どの段で「昔、男ありけり、、、」で始まるその男は在原業平がモデルだというのが定説である。なお、伊勢物語と呼ばれたのは業平の作に伊勢という女流歌人が手を加えたとか、物語中の伊勢斎宮の記事によるとか諸説あるようである。

また歌物語という形式としては伊勢物語が最初の作品で、「大和物語」、「平中物語」そして「源氏物語」に大きな影響をもたらしている。さらに和歌においては「後撰和歌集」、「拾遺和歌集」に採録されているという。そして後世においても能楽、人形浄瑠璃、歌舞伎の世界も伊勢物語を題材にしている。事ほど左様に伊勢物語は日本の古典文学の中でもとても重要な作品なのである。

とくに物語中に詠われている和歌の美しい音律や巧妙な序詞や掛詞や縁語は知的芸術を感じさせるし、物語の全体に漂う無常観など伊勢物語は日本人でなければ理解が難しい日本特有の古典文学だと思う。

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