佐藤忠良の素描

2010.12.23-2011.3.6開催 佐藤忠良展図録
2010.12.23-2011.3.6開催 佐藤忠良展図録

 

若い頃からミケランジェロ、ロダン、ジャコメッティなど彫刻家が描く素描が好きだった。そして特に佐藤忠良の素描に憧れていて模写をすることもあった。

2011年1月に世田谷美術館で開催されていた彫刻家・佐藤忠良(1912.7.4~2011.3.30)の個展を観て、その素描作品の前で目が釘付けになり暫く動けなかったことを今も忘れない。

 

2010.12.23-2011.3.6開催 佐藤忠良展パンフレット
2010.12.23-2011.3.6開催 佐藤忠良展パンフレット

勿論、佐藤忠良の彫刻作品の徹底したリアリズムに魅了される。当時の彫刻界は新しい創造を模索するように抽象的作品やデフォルメされた作品が多くなっていく中、佐藤忠良は頑なに自分の創作姿勢を変えることはなかった。1945年から1948年までのシベリア抑留体験がもしかしたら一途な意思と関係があるのかもしれない。私はそういう生き方にも敬意と憧れを抱いていた。特に「群馬の人」、「木曽」、「鋳物職」などの作品の圧倒的な実存は佐藤忠良の彫刻家としての本質そのものだと思う。又、佐藤忠良は子どもたちの夢と想像力を育む絵本を多く描いている。自分が芸術に身を置いて生きてきたなかで感じた大切なことを子どもたちに伝えたい一心なのだと思う。

それにつけても私は佐藤忠良の素描が好きだ。彼の素描を凝視していると対象をコンテや鉛筆で彫刻しているような感覚がある。しかしそれは後付けの理屈だ。やはりなんの理屈もなく佐藤忠良の素描が好きだ。

2011年に観た世田谷美術館の佐藤忠良展の2ヶ月後に佐藤忠良は他界している。98歳の一生だった。なお、佐藤忠良は文化功労者や文化勲章の候補に選ばれたが、「職人に勲章はいらない」と辞退しているという。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。