南茅部

・・・折しもバスは、峠を越えたところで、正面に海を眺めることができた。晴れた一日とはいえ、冬の海だ。白波をたてているのが、遠くからも見渡せる。夏には、浜は敷き詰められた昆布でいっぱいになる村だったが、冬は荒涼としている。・・・

谷村志穂の「海猫」の一節である。この小説を読んでいつか南茅部に行ってみたいと思っていた。そして今日、南茅部へ行った。小説の一節にあるように川汲峠をバスで越えると正面に南茅部の海が広がっていた。

南茅部の海
南茅部の海:遠くに昆布漁の養殖用のブイが見えるが、まだ昆布漁が解禁されていない。波際で採っているのは岩のりだろうか。
臼尻漁港
臼尻漁港:この親潮と津軽暖流が合流する美しい海で、豊かな広葉樹の山林からミネラルたっぷりの水が注がれ、美味しく良質な昆布が育つという。
山林から川が流れる
山から流れる精進川:南茅部には山林から大小50もの川が流れているという。
南茅部の海に川が注がれる
精進川が南茅部の海に栄養たっぷりの水を注ぐ
おばあちゃんのお手伝い
おばあちゃんのお手伝い:昆布漁解禁前の南茅部で微笑ましいのんびりとした風景に出会う。

 

じつは南茅部に行ったのは、以前に投稿したお茶を楽しむ会を主催した田中あつみさんからご自身がお住まいの南茅部でお茶を楽しむ会をするのでとお招きの連絡をいただいたからである。

お茶を楽しむ会が行われた二本柳旅館
お茶を楽しむ会が行われた二本柳旅館:この旅館は築80年という昭和レトロの建物で、美味しい手打ちそば店「久蔵」としても有名な旅館である。
お点前をする近藤美知絵さん
お点前をする近藤美知絵さん:今回のお茶を楽しむ会では田中あつみさんの師匠である近藤美知絵さんによるお点前をいただくことができた。午前中のお点前のあと、「久蔵」で手打ちそばをいただき、午後から大船遺跡で野外お点前も楽しんだ。
自然茶と菓子と南茅部の昆布揚
自然茶と菓子と南茅部の昆布揚げ:二本柳旅館に戻りまたお点前をいただいた。この昆布揚げは地元の方が南茅部の昆布を使って揚げたもので、自然茶といい組み合わせでとても美味しかった。

 

昆布漁解禁前の南茅部は静かで時間がゆったりしていて、そのゆったりとした時間の中、篠笛の音色を聴きながらいただく自然茶が身体に滲みていくようだった。まるで川が山林から南茅部の海へ注ぐミネラル水のように。

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